「世の中いろいろ」 2004.09.28

先日あるテレビ番組で見たことで、正直、「そんなんでいいのか」と思う事があった。

あるお店がチェーン展開していて、そこのお店は数ヶ月で店長になれるという。
レシピがあるから大丈夫ということなのだが・・・
実際このやり方で、この会社は業績を伸ばしているらしい。
確かにレシピがあれば、それなりのものが出来る事は出来るだろう。
しかし、それはそこまでの物でしかない。

経営者の立場で言えば、業績が伸びてるから問題ない。
それだけ評価をしてもらっているのだから、世の中で認められているということになる。
職人の立場から言えば、僕個人の意見だが、そんな事はしてはいけないと思ってしまう。

修行中に感じていた事で、今も思っていることで、悩んだりもすることなんだが
親方と同じ材料で、同じ作りかた、同じ調味料を同じ分量だけ使っても出来上がりに差がある事が多々あった。

もっと具体的に言うと、例えば蕎麦を打つとする。
その時には、粉と水とを混ぜるのだが、分量をはかって混ぜればいいというわけではない。
混ぜかた練りかたも重要だが、もっと他にも気をつけることはある。

蕎麦粉の保有水分は何%なのか、気温は、水温は、天気は、どうなのか。
蕎麦の収穫から何ヶ月たったのか。収穫して1ヶ月と5ヶ月と10ヶ月でも混ぜる水の量は違う。そしてその差は 0.1パーセントほどだったりする。
だから同じ日でも午前中と午後では水の量が変わってくる。
そうなると混ぜかた練りかた、伸ばし加減、切る太さ,厚さもも変わる。

こうなってくると数ヶ月の経験ではどうにもならない。
長年の経験だけが頼りになる。

ただ、これは職人としての意地とプライドの問題だ。
そして、商売人(経営者)の魂の問題でもある。

だからお客さんには言わない。言ったら暑苦しくなるだろうから・・・

僕の中で「食べる」という事には、ある思いがある。

「食事は楽しく愉快にリラックスして食べるべし」(kazuma語録001)

「思い出して・・・」 2004.09.26

先日「細雪(ささめゆき)」を作った。
「細雪」とは、簡単に言うとピーナッツ豆腐になる。
と言っても分かりにくいかもしれないが・・・
胡麻豆腐は、胡麻と葛粉を使って作る。
「細雪」は胡麻の代わりにピーナッツを使う。

普段は冬場にしか作らないが、何年か前に食べて美味しかったので、出来たら持ち帰えって食べさせたいらしい。
僕からしたら思い出してくれたのは正直嬉しかった。

引き受けた後話しをして分かった事だが、お父さんが御病気で食欲が無く、しかも柔らかい物しか食べれなくなっていて何か食べれそうな物と考えた結果、思い出したらしい。

この話を聞いて僕も父の食べれなかった時の事を思い出だした。
思い出したと言っても、僕はその時修行中で父の傍にはいられなかったが、それでも食べれない辛さは聞いていたし、それを知っている家族の辛さも分かっていた。
そんな思いがあったので、「細雪」の他に勝手に2品作って差し上げた。

その日の午後、わざわざお礼の電話が・・・。
沢山は食べれなかったが、3品とも口にしたらしい。
早く元気を取り戻し、食べる楽しさや嬉しさを感じて欲しい。

そして、いろんな意味でちょっと安心した。

「惚れる」 2004.09.24

惚れると言っても最近惚れたのは魚。
ちょっと変に思われるかもしれないけど・・・・

藤枝から一番近い海は駿河湾にになる。
海岸付近では水が綺麗だとは感じないが、少し沖に行くと水が凄く澄んでいるらしい。
東京の魚屋さんに言わせると「駿河湾は綺麗過ぎる」とのこと。
海が綺麗だと魚の見た目も綺麗になる。

駿河湾だけではないが、魚は皆美しい。
なかなか獲れた時の美しさではお店には並ばないが、時々物凄く美しいままで
仕入れる時がある。
そのときは、魚を見て惚れ惚れして嬉しくなる。
今回は甘鯛に惚れ惚れ。今年に入って最高の魚だった。

その他釣れたときに惚れる魚は秋刀魚(さんま) 太刀魚 あおり烏賊 真鯛 山女魚(やまめ)などとくに太刀魚は釣れた時など青く光っている。
真鯛は目の上のところが青紫色で、まるでアイシャドウをしているようだ。
秋刀魚(さんま)も鮮度がいいと下唇と尻尾のほうが黄色になっている。
これは鮮度が良い証拠にもなるので探してください。
太刀魚はこれから焼津港や大井川港で釣れるので、夜行けば見れるかもしれません。
好きな人は太刀魚の美しさを一度見ることをおすすめします。

「節句」  2004.09.09

今日は重陽の節句。別名重句の節句です。
日本に伝わったのは奈良朝以前に中国から伝わりました。
古代中国では「9」は縁起のよい数字で9月9日には「9」が重なるめでたい日ということで、ぐみの実や菊で邪気を払いをして長命を願う風習がありました。
日本では平安時代には「重陽の節会」として宮中行事に、江戸時代には武家の祝日になり、庶民の間でも様々な行事が行われていましたが旧暦から新暦に変わり菊が咲く時期でなくなったので、最近ではあまり引き継がれなくなってきたようです。

菊の花は料理に使う。
邪気払いや、季節を表したり、彩だったりをするが食べると以外においしい。
と言っても、よくお刺身のところに小さい菊の花が丸ごとついているものではなくもっと大きな菊の花があるので、それをサッと茹でてお浸しにすると甘みが有り歯ごたえもよい。
そんな訳で菊の花は、見た目も楽しめるし食べても美味しいしので地味な感じはあるが活躍してくれる。

「鮪」  2004.09.03

今日世界で始めて完全養殖鮪が出荷された。
完全養殖とは生簀の中で産卵した卵から育てた物で、1970年に養殖実験を開始したらしい。実に34年もかかっている。
これからはこのような完全養殖の魚が増えてきそうだ。

天然と養殖にはそれぞれ長所と短所がある。
どちらが美味しいといえば、断然天然になるだろう。
値段は天然が高く養殖が安い。
これは美味しさが物語っている。
だが、いったん海が荒れると天然は手に入らない。
だが養殖は何とかなる。
言い換えれば仕入れの時に天然は安定していないが養殖は安定して仕入れることが出来るだろう。

「あずまそ」 では鰻とスッポン以外の養殖の魚はつかわない。
こんな事を書くと 「こだわっている」 とか、「高級」 とか言われるが僕から言えば当然の事になる。
商売としてやっている以上、材料に気を使い良い物を仕入れるのは当たり前の事だからだ。

親父がよく言っていた言葉を思い出す。

「お客さんはお店にお金を出して食事に来るのだから普段家庭で食べている物と同じレベルの物を出さないように」

この心をいつまでも忘れないようにしたい。

「椅子」  2004.09.02

6年前にお葬式に出た時、お寺では皆正座をしてた。
3年前に法事に出た時、足腰の悪いお年よりは椅子に座り、それ以外の人は正座をしてた。
今年、法事に出た時は皆椅子に座ってた。
他のお寺でも、お葬式や法事をする時に正座をすることは少なくなり、最近はほとんど椅子が用意されている。
厨房器具などを扱っている業者さんからは、座敷で使える低いテーブルと椅子の販売の案内があった。

正座や座敷で座るよりも、椅子に座る方が遥かに楽だと思う。
もし、宴会などでテーブルに椅子という風になると料理を出したりするのも随分と楽になるはずだ。
母が言うには、「年取ってくると、お料理を出したり器を片付けたりする時に重たいお盆を持っての座ったり、立ったりが大変なのよ」との事。

法事の時にお年寄りの方が膝が悪くて座れないということが何度かあったり、予約の時に個室よりも椅子席が座るのに楽だから椅子席にしてくれと言われたり、椅子の重要性が増しつつある。
そんなこんなで、今法事の時にどうしても座れない方のために数人分テーブルと椅子を用意することをに用意を検討中。
将来的には座敷の個室の他にテーブルと椅子の個室なんて事も考えている。

まぁ 返す物を返してからの事だから、いつになるかはわからないが・・・・

「アテネオリンピック」 2004.08.20

今回のアテネオリンピックは202の地域と国から人々が集まって開催しているそうだ。選手村には約1万6000人ほどの人がいるらしい。
当然その人々の食事を作っている人たちがいるのだが、大変な事になっているだろう。
食堂には約5000人が一度に入れるというし、選手たちの食事の時間がバラバラだから朝早くから夜遅くまで食事の用意をしなくてはならないだろう。

ギリシャは日本より暑いらしい。
この暑さの中で食堂はバイキング形式になっているようなので、食中毒なども心配になるだろう。
だから選手が食べようが食べまいが何時間かたった料理はすべて回収し処分されているのではないかと変な心配をする。
もしそうだとしたら、少し考えなくてはいけない問題だろう。

確かに日本は豊かな国だし、オリンピックに出ている選手たちはそれなりの生活レベルに達しているだろう。
しかし、今の時代になっても世界のどこかでは、飢えに苦しんでいる人がいるのだから・・・

「無花果蜜煮」 2004.08.10

無花果(いちじく)の蜜煮(コンポート)を毎年作る。
今年は暑さのためなのか、例年より無花果が早く出来ている。
去年は冷夏で9月の中頃だった。
約一ヶ月も違うとちょっと感覚がおかしくなる。

日本は世界中のどの国よりも四季がはっきりしている。
四季がはっきりしているから、料理も季節ごとの特色があるし、地域ごとの違いも出てくる。
違いはいいけど、その分大変な事が多くなる。手に入る筈のものが入らなかったりすると困る。だから天気や天候によって仕入れが変わる。
まぁ、無花果についてはそれほど驚かない。
ハウス物の早い物は6月には出回っているし、地物でも8月の終わりには出てくるからだ。

無花果の蜜煮はデザートとしてお店で使うし、お土産での販売もする。
毎年楽しみにしている人もいて、宅急便で送ったりもする。
お求めの方はお気軽に連絡下さい。

「花火大会終わる」 2004.08.07

毎年8月7日は蓮華寺池の花火大会がある。
「あずまそ」では、毎年桟敷席を作り、一人5,250円で缶ビール一本と助六のお寿司をつけている。あとは、持込自由で、ゴミは引き取っている。
で、この値段が・・・くせもの。
高いって言う人もいれば、安いって言う人もいる。
僕としては・・・正直、高いのか安いのか分からない。
商売としては、売り上げも凄いけど、支払いも凄い。
普通に料理を作って商売していたほうが、利益率はいい位。
まぁ、僕の給料がもの凄〜く安くしてあるってのもあるけど。
で、一応は適正価格かな〜と思って商売している。

そんな事を考えながら、今年も花火大会は終わった。
今年は片付けの時に友達に来てもらった。二人ほど頼んでいたのが、8人も来てくれてとても感謝。特におざ(小学校からの同級生の小沢敏文)には片付けだけでなく、準備も手伝ってもらって感謝。
片付け終了後、みんなにはビールに酒、おつまみを少しだけど進呈。

でも、おごったつもりが、誰かが飲み代をおいてった。
なんでかな〜。いらないって言ったのに。
今度来た時はいつも以上にサービスを・・・義には義で返します。
みんなありがとう。

「名前の由来  蒲焼編」 2004.08.01

夏の代表的な食べ物で、毎年テレビで取り上げられる物のひとつに鰻がある。
今市場に出回っている殆どの物は養殖物で、天然鰻は殆ど出回らない。
そんな鰻のもっとも代表的な食べかたは蒲焼でしょう。
で、この蒲焼の名の由来は・・・・

普通魚を焼く時は、焼き色はついても焦げないように気をつけます。しかし、鰻の場合は違います。身のほうは焼き色がつくくらいまで焼きますが、皮の方は焦げるくらい焼きます。
そこまで焼かないと、生臭いし皮はかたいし、美味しくないからです。

当時、魚を焦がすのは、「馬鹿」が焼いた証拠で、焦げた焼き魚をすべて「馬鹿焼き」と呼んで、失敗を笑ったそうです。
しかし、鰻に関しては失敗ではなく、美味しく焼けてるので
馬鹿に出来ませんし、第一「馬鹿焼き」なんて名前が良くありません。おまけに、よく焼いて焦げている皮の方を表にして盛り付けていたので、見た目も悪かったのです。

そこで盛り付ける時に見た目の悪い皮の方を下に、身を上にひっくり返したそうです。
で、ついでに「ばか焼き」を「かば焼き」という風に名前もひっくり返えりました。
こんな事で、今に至っているようです。

今度鰻を食べる時には、ちょっと我慢して皮の方を見てください。普通の魚なら思わず「焦げてる」って言いたくなるくらい焼けているはずです。