「味見」 2004.10.27

料理をすると必ずするのが味見。
もっと広い意味で言うならば、つまみ食いや食品コーナーなどの試食も味見と言えるだろう。
当然僕も味見をする。作った物全て味見をするので最近太ってきている。
ある会社の社長さんには「マル」だとか「里芋」かと太ったイメージのあだ名を 付けられたりする。
まぁ この社長は小学校からの付き合いの同級生で半分親しみを込めてもう半分はからかっているみたいだが・・・
だが僕はあんまり気にしない。料理人にとって多少太っても仕方ないと思っているからだ。スポーツ選手で言えば筋肉質と言ったところか。
それに、痩せている人と太っている人が料理を作った場合、太っている人のほうが美味しそうに見えるから痩せないように気を付けている。

味見はみんなすると思うが、前々から気になっている事がある。
僕が味見をするときは必ず専用の味見皿を使う。
お玉や箸やスプーンなど、直接使わないようにする。
でも、世の中には極一部の料理人だが、お玉や箸やスプーンなどで味見をして、それらを洗わずに盛り付ける人たちがいる。
簡単に言うと、お客さんが知らない間に間接キスをしている。
これはお客さんにとって失礼な事だろう。
先日も洋食のシェフがソースをスプーンで味見をして、それを洗わずにソースを
かけてお客さんに出しているのをテレビで見た。
テレビでこの様な場面を放送するのもどうかと思うし、こういった事を気にしないでいる人たちにはもう少し考えて欲しい。
人それぞれで考えかたも感じかたもと言えばそれまでになるが、料理人として
ではなく、一人の人間として気をつけたい。

「礼儀」 2004.10.17

親子で食事をするというのはあまり珍しい事ではない。
今日食事に来られた親子にはビックリと言うか勉強になった。

父親、母親、息子、息子さんの奥さん(正確に言うと来月結婚されるそうなのだが)の四人で来られたのだが・・・

この方(父親)は空手の館長をやっておられる方。静岡県内の町道場で約300人位生徒さんがいる。空手の技術だけでなく人間形成をも考えて教えているため、最初の一ヶ月間は親御さんも一緒に道場の中に入ってもっらって稽古を見る。見ているときは親御さんも正座をしなくてはいけないらしい。
こういう考えかたをしていて、それを自分の息子も人様の息子も同じように教えている。いや、息子さんの方が厳しくしてそうだ。

食事の時は親子なので和やかで楽しんでいた。
で、ビックリしたのは帰られるとき。
別々の車で来られていて駐車場で館長たちは車に乗ったのに、息子さんは乗らずに館長たちに向かって、
「今日はご馳走様でした。ありがとうございました。」と、頭を下げ走り去っていくまで見送っていた。

この方たちは血の繋がった実の親子なのに、ここまで礼儀正しくするというのはすごいこと。僕が出来ていないから余計に感じてしまうのかもしれないが・・・僕には出来ない。母や祖父母に向かって「おはようございます」程度ならいうが、家族で食事に出かけて行ってそこまでは無理。
最近僕の中で、家族への尊敬や敬うといった気持ちが足りない事にも気がつかされた。今日はいい勉強になった。

「名産」 2004.10.13

河豚と書いて「ふぐ」とよむ。
今、浜松では河豚を名産にしようとしている。
実際、遠州灘沖で去年は約72tが水揚げされた。このうちの大半が地元以外で消費される。下関や築地にも送られている。
これを浜松では名産にしようというのだが・・・

値段はコース料理で一人前1万円位〜らしい。
この値段が高いのか安いのか。どのくらいの量を出すかにもよるが、高くはない。むしろ安い位だと思う。

ただし、それは「トラフグ」での話しになる。河豚と言っても、何十種類もいる。その中で、味も値段も様々。種類によっては毒が無かったりする。
河豚と言えば何でも高くて美味しいわけではない。
同じ大きさでも「トラフグ」は1万円で安い河豚は千円だったりする。
値段は正直なのである。

白身の魚は美味しくないと言う人もいるので河豚を食べた人全てが美味しいと言うかはわからないが、僕個人の意見ではトラフグは美味しい。
でも一番というわけではない。
それぞれのものは味が違うので単純には比べられないから・・・

「変化」 2004.10.10

世の中全てのものは常に変化している。
スピードには差はあるが・・・

食べ物の好みも随分と変わってきている。
今の5歳位の子供と、10年前の5歳くらいの子供では喜ぶものが違う。
予約の時に小さい子供がいるので何か子供用に作ってくださいと言われることがよくある。
10年前はエビフライを用意していたのだが、最近では海老の天ぷらを用意するようになった。
それはなぜか?
答えは簡単だ。前はほとんどの子供がエビフライで喜んでいた。
今は喜ばない。喜ばないどころか嫌だと言ったりする。
(どうやら大人と同じ物でないと気に入らないようだ。)
変わったのは子供だけではない。大人も前とは違う。
昔は宴会の時に茶碗蒸しを出すとする。そうすると3割くらいの人は食べていない。まったく手を付けていないのだ。
一口食べて不味いから残すのなら分かるが、食べもしないで残ってくる事が多かった。今は残す人など殆どいなくなった。
ほかにも幾つかこの様なケースはある。

これはこれで少し悩む。
とかく日本人は流行りものに弱い。で、すぐに飽きてしまう。
だが、逆に言えば何でも柔軟に取り入れるという事にんるのだが・・・

「椅子購入」 2004.10.06

法事などのときに、ご年配の方で椅子じゃないと座れない方が時々いらっしゃるという事を以前書いたのだが、実はその4日後に椅子の必要なご年配の方がお見えになり、やはり椅子は早めに用意した方が良いということになり購入した。
滅多に椅子が必要ではないので、とりあえず2つだけ買って様子を見る事に。
出来る事なら全部改装して、テーブルに椅子というのも魅力的だが、法事や宴会の時は席を移動してお酒を酌み交わす事が多いので椅子席には今のところしない。
ただこの先はわからない。今年は全国で100歳以上の方が2万人以上になったし、2007年には人口の半分以上が50歳以上になるという。
各家庭ではベット多が多く使われているだろうし、テーブルに椅子で食事をするというのも、めずらしくないはずだ。
そんな事も考えると、これからは料理屋も個室で椅子席の時代が来るだろう。
座布団なんかは必要とされないかもしれない。
正座が出来ない日本人だらけになりそうだ。
それは案外近い将来の事の気がしてならない。

「葛藤」 2004.10.02

今藤枝では、3年に一度のお祭りをやっている。
僕は参加してない。正直に言うと参加したかった。
参加すれば間違いなく楽しかっただろう。知り合いや友達も増えただろうし、そこからお客さんになってくれたかもしれない。
でも参加していない。

今、一番に考えるのはお店の事。営業時間は空けていようと決めた。
たとえお客さんが来ても来なくてもだ。
お店によっては休んだりしてるみたいだが・・・

今日はお祭りということで、お客さんは4時に予約して6時には帰ってしまった。
別のお客さんも7時前には帰られた。
そこからでもお祭りに出れるのだけれども、お客さんが来て閉まっていては申し訳ないと思い開けてた。
で、結局こなかった。明日はお祭りの最終日。
出たい。でも、僕には店がある。こんな事を考えてる時間があるのなら、本でも読めばいいのだが、なにせ3年に一度しかないから気になる。
多分明日はお祭りをやっている以上、今日よりお客さんが来る確率が低い。
でも、「あずまそ」は営業します。営業時間はきっちりと。

僕自身弱い心がある。それに負けないように、気合を入れて料理作ります。

「松茸」 2004.10.01

秋の味覚のひとつに松茸がある。って、僕は思っている。
でも、世の中には松茸を嫌いな人もいる。
小学校からの同級生の「そーちゃん(増田宗亮)」に言わせると、松茸よりハンバーガーの方がいいらしい。
もっとも彼は好き嫌いが多いから仕方ないのかもしれなが・・・・

秋にはその他いろんな食材が出てくる。
松茸もそのうちの一つに過ぎないが人によっては秋の味覚の王様と言う人もいる。
僕からいうと松茸は王様ではない。じゃぁ何が王様かといえばそんなものはない。松茸、栗、銀杏、舞茸などあるが、一つとして同じ味、香り、食感のものなどないから王様なんていうのは可笑しいと思う。
言い出した人は値段だけ見てあまりにも高いからそんな事を言ったのではないだろうか。

毎年の事だが国産の松茸の相場は産地によって異なるが1kg約8〜20万円くらい。それ以上になる事もある。
外国産だと1〜5万円位といったところか。(僕が使いたいのは1kgで25本位の大きさの物。)
しかも国産の松茸は虫に食われていて使えない物が2〜3割ある。
今年は暑くて虫の動きが活発なため半分使えなかったりする。
そうなると、とんでもなく高いものになる。

正直に言って、「あずまそ」で使っているものは、韓国や中国のものだ。値段的にも国産は買えないし。
でも、予約してもらえれば、仕入れることはできるから国産を出す事は可能なのだが・・・
しかし、値段が10倍しても味が10倍になるとは限らない・・・

ちなみに、松茸のコースだと外国産なら料理の品数にもよるが、お造り 土瓶蒸し 焼き物 炊き合わせ 松茸ご飯 デザートこんな感じで¥4,000〜¥5,000円位になる。
国産のコースだと¥30,000円〜といったところか。
それでも虫食いが沢山でると利益が出ないことも考えれる料金だ。

今回なぜこんなにも嫌らしく値段の事を書いたのには訳がある。
テレビで見たり雑誌で読んだりしていると、国産と偽っているような事が少なからず見たからだ。この値段は東京の築地市場で聞いた値段だし、京都の八百屋さんでも同じだった。
こんな事を公にすると、もしかしたら、どこかのお店の方に嫌われるかもしれないが、僕は料理屋の不透明な部分を無くしたいと考えている。